損切りの本質─20年以上の投資経験から見えた「損切りに正解がない理由」─

はじめに:損切りは大事なのに“正解がない”
投資を続けていると必ず向き合うことになるのが 損切り です。
ただし、これほど重要なテーマであるにもかかわらず、損切りには明確な正解がありません。
- 20%下がったら無条件に損切りする人
- 不祥事や下方修正が出たら売る人
- 基本的に損切りはせず、むしろ買い増す人
なぜここまで意見が分かれるのか。
それは、投資スタイルと戦略が人によってまったく違うからです。
1. なぜ損切りの基準は人によって違うのか?
● 短期売買(デイトレ・スイング)
短期投資では 資金効率が命 です。
損失を抱えたままでは資金が拘束され、次のチャンスに乗れません。
だからこそ、短期投資家は損切りが早い。
● 中長期投資
一方、中長期投資では短期の値動きはそれほど重要ではありません。
購入した前提が崩れなければ保有を続ける という考え方が一般的です。
つまり、損切りの基準は
「どんな投資スタイルで戦っているか」
によって大きく変わるのです。
2. 損切りが大事な理由
─「資金拘束」と「戻りにくさ」
損切りが重要なのは、
いつまでも上がらない株を持ち続けると、
次の一手が打てなくなるからです。
さらに、株価には「戻りにくさ」という性質があります。
▼ 例:1,000円 → 500円に下落した場合
- 50%下落 → 500円
- そこから50%上昇しても → 750円
元の1,000円に戻るには株価が“倍”になる必要がある。
この非対称性が、損切りの重要性を物語っています。
3. 私の損切り基準
──中長期投資家としての判断軸
私は基本的に中長期投資なので、
買った前提が崩れない限りは売らない スタイルです。
買う前提はシンプルで、
- 業績が右肩上がりで株価に割高感がない
- 会社の業績予想や四季報の予想が実績と大きく乖離していない
この条件が崩れなければ保有を続けます。
地合いが悪くて下げているだけなら、むしろ買い増すことも多いです。
では、どんな時に損切りするのか。
4. 私が実際に損切りしたケース
① 粉飾決算(即売り)
過去に一度、グレイステクノロジーで被害に遭いました。
結果的に上場廃止となり、早めに手放して正解でした。
粉飾決算は上場廃止リスクがあるため、
基本的には即売りが原則です。
ただし、内容によっては例外もあります。
- 子会社の不適切会計
- 企業全体への影響が限定的
最近のエア・ウォーターのケースはこれに該当し、私は保有を継続しました。
判断が難しい場合は一度手放してから考えるのがいいと思います。
② 業績の急悪化(下方修正)
下方修正が出た場合も、基本的には売りです。
ただし、こちらも 内容次第。
- 売上が大きく落ちている → 売る
- 一時的な特別損失 → 売らない
私は明確な数値基準は設けていませんが、
売上がガタ落ちしているかどうか を重視しています。
③ チャートの違和感(じりじり下げ)
私は買うときに、業績推移から将来の株価イメージを描きます。
しかし、短信や四季報の内容が順調なのに じりじり下げ続ける銘柄 が存在します。
こういう時は、悪材料が表に出ていなくても手放すことがあります。
それは経験上、
じりじり下げる時は“知る人だけが知っている何か”があることが多い。
から。
- 近いうちに下方修正が出る
- 社内の雰囲気が悪く、口コミ的に広がっている
- 大口投資家が静かに売っている
インサイダー取引は違法ですが、
企業で働く人が“空気感”を察知することはあります。
私はこれまで何度もこの嫌な予感が当たってきました。
だから、
業績好調に見えても株価の勢いがなく、じりじり下げる銘柄は一度距離を置く
という判断をしています。
5. 損切りの本質
──「損小利大」の“損小”をどう実現するか
投資ではよく
損小利大(損は小さく、利益は大きく)
と言われます。
今回のテーマである損切りは、この“損小”にあたります。
ただし、
損が出たからといって無条件にバンバン損切りしていては資金が持ちません。
大事なのは、
- 自分の投資スタイル
- 自分の戦略
- 自分の前提条件
これらに基づいて、
「なぜ損切りするのか」 を自分の中で明確にしておくことです。
まとめ:損切りに“正解”はない。だからこそ「自分の軸」が必要
損切りは投資において欠かせない行動ですが、
万人に共通する正解はありません。
- 投資スタイル
- 投資期間
- リスク許容度
- 判断基準
これらが人によって違うからです。
だからこそ、
自分の投資スタイルに合った損切り基準を持つことが大切。
そして、
「前提が崩れたら売る」
というシンプルな軸を持つだけでも、投資は驚くほど安定します。
是非皆さんももう一度自分の損切りについて考えてみてください。
この記事がその際の参考になれば幸いです。











