投資の世界には「カバードコールETF」という少し難しそうな商品があります。しかし、仕組みを理解してから身近な例に置き換えると、とても分かりやすくなります。この記事では、まずカバードコールの基本を説明し、その後に日常生活の例えで理解を深め、最後に戦略の種類と代表的な銘柄を紹介します。


📘 カバードコールETFとは?

カバードコールETFは、株式を保有しながらその株に対する「コールオプション」を売ることで収入を得る仕組みのETFです。

  • 株式を保有:NASDAQ100やS&P500などの株を持つ。
  • コールオプションを売却:一定価格で株を買う権利を他人に売る。
  • プレミアム収入:オプションを売った代金が毎月の分配金の源泉になる。

結果として、株価が大きく上昇した場合の利益は限定されますが、安定した収入を得られるのが特徴です。投資家にとっては「値上がり益を犠牲にしてでも毎月の安定収入を得たい」というニーズに応える商品と言えます。

なかなか簡潔にまとめるのが難しいですが、次の図解が比較的分かりやすいかなと思いますので参考にしてみてください。

(カバードコール戦略の例-原資産が株式の場合)
カバードコール戦略における損益イメージ

カバードコール戦略における損益イメージ

https://www.daiwa-am.co.jp/etf/glossary/ka/cover_1/)出典:大和アセットマネジメント


身近な例に例えてみる

正直ここまでの説明を聞いてみてもいまいち分かりにくいという方も多いと思います。そこで、身近な例に置き換えてみるともう少し理解が進むかなと思いますので3つの例に例えてみました。


🍎 畑・果樹園の例え

  • 株式保有=果樹園を持っていること
  • コールオプション売却=収穫権を近所の人に売ること
  • プレミアム収入=収穫権を売った代金

あなたは果樹園を所有していますが、自ら収穫するのではなくその収穫権を他人に売ります。そうすると収穫量に関係なく安定した収入を得ることができます。ただし、大豊作になったとしても、豊作に見合った利益は得られず制限されます。これは株価が大きく上がっても利益が限定されるカバードコールETFの特徴と同じです。


🛡 保険の例え

  • 保険会社=カバードコールETF
  • 保険料=オプションプレミアム
  • 事故リスク=株価上昇の機会損失

保険会社は事故が起きるリスクを引き受ける代わりに保険料を受け取ります。同じように、カバードコールETFは株価上昇の可能性を手放す代わりにプレミアム収入を得ます。安定したキャッシュフローを狙うという点で両者はよく似ています。投資を「保険ビジネス」として捉えると、毎月の分配金が保険料収入に見えてきます。


🏠 大家さんの例え

  • 株式保有=マンションを所有
  • コールオプション売却=部屋を貸す契約を結ぶ
  • プレミアム収入=家賃

マンションを購入して値上がり益を待つのではなく、賃貸に出せば家賃収入として収入が安定します。しかし、マンション価格が上がってもすぐには売れないため値上がり益は得られません。これもカバードコールETFの仕組みに近いです。投資家にとっては「資産を持ちながら家賃収入を得る」イメージで理解すると分かりやすいでしょう。


✅ メリットとデメリットを例えで理解

  • メリット:毎月の「家賃」「保険料」「収穫権代金」が入る安心感。
  • デメリット:大豊作やマンション価格急騰のような「大きな値上がり益」は逃す。

つまり、安定収入を優先する代わりに、キャピタルゲインの一部を犠牲にする戦略です。インカム投資を重視する人には向いていますが、成長株の値上がり益を狙いたい人には不向きです。


🎯 カバードコール戦略にも種類がある

カバードコールETFと一口に言っても、戦略の取り方には違いがあります。

1. フルカバレッジ型

  • 保有株式すべてに対してコールオプションを売る。
  • 特徴:分配金(プレミアム収入)が最大化されるが、株価上昇益はほぼ諦める。

2. 部分カバレッジ型

  • 保有株式の一部だけにオプションをかける。
  • 特徴:分配金は減るが、株価上昇の恩恵を一部受けられる。

3. アット・ザ・マネー(ATM)型

  • 株価とほぼ同じ水準の権利行使価格でオプションを売る。
  • 特徴:プレミアム収入は大きいが、株価上昇益は制限されやすい。

4. アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)型

  • 株価より高い水準の権利行使価格でオプションを売る。
  • 特徴:プレミアム収入はやや減るが、株価上昇益をある程度残せる。

5. イン・ザ・マネー(ITM)型

  • 株価より低い水準の権利行使価格でオプションを売る。
  • 特徴:プレミアム収入は大きいが、株価上昇益はほぼ失われる。防御的な戦略。

6. ローテーション型(ダイナミック戦略)

  • 市場環境に応じて「フル」「部分」「OTM」などを切り替える。
  • 特徴:相場に合わせて柔軟に収益とリスクを調整できる。

⚖️ 投資家が考えるべきポイント

  • インカム重視か、値上がり益も取りたいか
  • 相場環境(横ばい・下落・上昇)に応じて戦略を変えるか固定するか
  • ETFごとの設計の違い:QYLDはフルカバレッジ型、JEPIは部分的にオプションをかけるなど、銘柄ごとに性格が異なる。

✨ まとめ

カバードコールETFは、資産を持ちながら権利を貸して安定収入を得る仕組みです。畑や保険、大家さんの例えを通じて考えると、投資初心者でも理解しやすくなります。さらに、ETFごとに「フルカバレッジ型」「部分カバレッジ型」といった戦略の違いがあるため、自分の投資目的に合わせて選んでみるといいと思います。

「毎月の安定収入を得たい」「配当生活を目指したい」という人にとって、カバードコールETFは魅力的な選択肢だと考えています。私自身も資産が増えてきて、今後は資産の増加より安定したインカムという状況になってこのカバードコールETFを保有するようになりました。


続編として契約農家に例えた記事も書いてみました。