住宅ローン減税の適用期間が終わった後、繰り上げ返済はどう考えるべきか

最近、Xで「住宅ローン減税の控除期間が終わった後の繰り上げ返済」についてポストしたところ、予想以上に反応がありました。
いわゆる“プチバズ”のような状態で、リプライや引用ポストでも多くの意見が寄せられ、改めてこのテーマへの関心の高さを感じました。
昨年で住宅ローン減税が受けられる期間が終わった。
— NAO@FIRE 2026.3 (@nao_toushi) January 21, 2026
残債は1,800万程度。金利は変動で1.275%
運用利回りの方が高いけど、借入銀行の口座に150万程貯まっていたのでそれだけでも繰り上げする事にした。
団信も入っているから、無理な返済はしないけど、余力の範囲で今後も返済していこうかな
住宅ローンは多くの家庭にとって大きな支出であり、繰り上げ返済は家計や資産形成に直結するテーマです。特に、住宅ローン減税の控除期間が終わった後は、実質的な金利負担が増えるため、「返すべきか、運用すべきか」という議論がネット上でも頻繁に見られます。
まず誤解のないように書いておくと、
“住宅ローン減税が終わった”というのは制度が終了したわけではなく、私自身の控除期間(10年間)が満了したという意味です。
そのうえで、控除期間終了後の繰り上げ返済について、私自身の判断と、FPとしての一般的な考え方を整理してみます。
■ なぜ控除期間が終わると繰り上げ返済が話題になるのか
住宅ローン減税の控除期間中は、年末残高の一定割合が所得税・住民税から控除されるため、実質金利が下がる状態になります。
しかし控除期間が終わると、
- 実質金利が上がる
- 返済額のうち利息の割合が相対的に増える
- 金利上昇局面では心理的にも返したくなる
こうした理由から、「控除期間終了後は繰り上げ返済した方がいい」という意見が増えるわけです。
ただし、これは“条件が合えば”の話で、家庭ごとに前提条件が違うため、正解は一つではありません。
■ 判断を分ける6つの要素
繰り上げ返済の是非は、次のような要素で大きく変わります。
| 要素 | どう影響するか |
| 金利(固定/変動) | 金利が高いほど返済メリットが大きい |
| 残債・残期間 | 残期間が長いほど利息削減効果が大きい |
| 団信の有無 | 保険としての価値があるため、返しすぎは逆効果になることも |
| 住宅ローン減税の適用状況 | 控除期間中は返済メリットが小さい |
| 家計の余力 | 生活の質を落とす返済は本末転倒 |
| 運用利回り | 運用>金利なら返さない選択も合理的 |
ネットで意見が割れるのは、まさにこの“前提条件の違い”があるからです。
■ よくある意見①:控除終了後は返した方が得
- 実質金利が上がる
- 変動金利で残期間が長いほど利息削減効果が大きい
- 金利上昇局面では心理的にも返したくなる
特に、金利が1.5%以上で残期間が長い人は、繰り上げ返済の効果が大きくなりやすいと言われています。
■ よくある意見②:運用した方が合理的
- 運用利回り>住宅ローン金利なら、数学的には運用が有利
- 低金利の変動なら返済メリットが小さい
- 「返済は機会損失」という考え方も根強い
インデックス投資をしている人の間では、この意見が特に多い印象です。
■ よくある意見③:団信があるから返しすぎは逆効果
団信(団体信用生命保険)は、万が一のときに残債がゼロになる仕組みです。
つまり、生命保険の代わりとしての価値があります。
そのため、
- 団信があるのに生活を削って返済する
- 団信の保険価値を自ら減らしてしまう
こうした状態は、合理的とは言えません。
■ 私自身のケース:FIRE後のキャッシュフローと心の余裕のバランス
ここからは、私自身の判断です。
- 住宅ローン減税の控除期間(10年)が終了
- 残債:約1,800万円
- 金利:変動 1.275%(当初は0.875でここ数年上昇傾向)
- 借入銀行の口座に150万円ほど余剰資金(特に用途なし)
- 団信加入済み
- 2025年3月末でFIRE
- 今後の返済原資は“配当金”が中心
金利が1.275%だと運用した方が利回りが高いので、数学的には返済せずに運用資金に回した方が合理的です。
実際、Xでも「返すのはもったいない」「運用に回した方がいい」という意見が多く寄せられました。
ただ、私の場合はもうすぐFIREして給与収入がなくなります。今後の住宅ローン返済の原資はどうするのかというと、配当金から返済していく予定です。
つまり、運用して得た利益から返済するわけで、結局は“運用と返済の両立”になっています。
これまで繰り上げ返済に充てずに運用に回してきた資産。その資産が生み出す配当で住宅ローンの返済をする訳ですから、自分の懐は痛まないのです。
とはいえ、FIRE後は今までの給与収入に比べると不安定になります。
- 将来の減配リスク
- 金利上昇リスク
- キャッシュフローの安定性
これらを考えると、余力のあるうちに無理のない範囲で返すという選択が、私にとっては最も納得感がありました。
ただし、絶対に避けたいのは、
団信があるのに、生活の質を犠牲にしてまで返済に注力すること。
ここだけは明確に線を引いています。
■ 数字では損でも、心では得になることがある
今回のテーマに寄せられた反応を見ていて感じたのは、
住宅ローンの繰り上げ返済は「安心にお金を払う」という側面が強いということです。
これは保険と同じで、数学的に見れば「返さない方が得」でも、
精神的には「借金が減る安心感」を選ぶ人が一定数います。
実際、日常生活でも同じようなことはよくあります。
- 保険料は期待値で見れば“損”だけど、安心のために払う
- 現金を多めに持つのはインフレに弱いけれど、手元にある安心感を優先する
- 格安SIMにすれば安いのに、通信の不安から大手キャリアを選ぶ
つまり、人は合理性だけで動くわけではなく、納得感や安心感を重視する生き物なんですよね。
今回の私の判断もまさにそれで、
「運用利回りの方が高い」という数字は理解したうえで、
FIRE後のキャッシュフローの安定や心の余裕を優先しました。
■ 繰り上げ返済には2種類ある
ちなみに繰り上げ返済するとき、その返済方法には2つの方法があります。
期間短縮型と返済額軽減型です。それぞれの特徴は、
● ① 期間短縮型
- 総支払利息が最も減る
- 毎月の返済額は変わらない
- 将来のキャッシュフローが軽くなる
- FIRE勢や早期返済したい人向け
● ② 返済額軽減型
- 毎月の返済額が下がる
- キャッシュフローが改善
- 子育て期・収入不安定期に向いている
- FIRE後の生活防衛にも有効
どちらが正解というより、何を優先したいかで選ぶべきです。
■ 結論:価値観で選んでいい
控除期間終了後の繰り上げ返済は、
- 金利
- 家計の余力
- 団信の捉え方
- 運用とのバランス
- 心の余裕
- 生活の質
これらによって各々の状況や価値観によって最適解が変わります。
私自身は、FIRE後のキャッシュフローと心の安定を両立させるために、
余力の範囲で、少しずつ返す。
ただし生活の質は絶対に落とさない。
という方針を選びました。
読者の皆さんも、数字だけでなく“自分の価値観”を含めて判断してほしいと思います。
■ 補足:Xでの反応から感じたこと
今回のポストに寄せられた意見を見ていると、
- 「返済はもったいない、運用した方がいい」
- 「いや、控除が終わったなら返した方がいい」
- 「団信があるなら返しすぎは逆に損」
と、価値観によって結論が大きく分かれていました。
この“意見の多様さ”こそが、住宅ローンの難しさであり、同時に面白いところでもあります。
だからこそ、この記事では「どれが正しいか」ではなく、読者が自分の状況と価値観に合わせて判断できる材料を整理することを意識しました。












