サラリーマン卒業と、突然始まった「専業主夫」の日常

こんにちは、NAOです。

今年の3月末、私は20年ほど勤めた公務員を退職し、サラリーマン生活を「卒業」しました。いわゆるFIRE(経済的自立と早期リタイア)を達成したわけですが、リタイア生活のスタートは、私が当初想像していたものとは少し違う形で幕を開けました。

というのも、妻が4月から非常に忙しい部署に異動になり、毎日のように残業が続くことになったのです。

まだ働いている妻、そして学校に通う子どもたち。必然的に、我が家の家事全般は私の役割になりました。

朝起きて子どもたちの朝ご飯を用意し、家族を送り出す。その後は、風呂掃除、洗濯、トイレ掃除……気がつけば、これらが私の毎日のルーティンになっています。

会社員時代には見えていなかった、家庭を回すための細かな営み。そんな日常の中で、ある1冊の本との出会いがありました。

本との出会い:『魂の退職』の先にあった『家事か地獄か』

先日、久しぶりに地元の図書館へ足を運びました。

以前、元朝日新聞記者の稲垣えみ子さんの著書『魂の退職』を読みブログ記事にもしましたが、彼女の思想や、FIRE的な暮らしぶりに深く感銘を受けていたため、「他の著書も読んでみよう」と思ったのがきっかけです。

『魂の退社』に学ぶ、会社依存から脱却し現代の「林住期」としてのFIREを生きる方法 「このまま今の組織に居続けても、10年後、20年後の自分の姿が透けて見えてしまう……」 「出世や昇給を追いかけるレースに、どこか...

お目当てのタイトルはあいにく貸し出し中だったのですが、本棚を眺めているときに、ふと目に飛び込んできたのが稲垣さんの別の著書『家事か地獄か』という強烈なタイトルの本でした。

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ちょうど自分自身が家事に向き合う時間が増えていた時期だったため、「家事」というワードに自然と目がいきました。

「彼女の暮らし方や家事へのアプローチには、きっと私たちのFIRE生活にも通じるヒントがあるはずだ」――そんな期待を胸に借りて帰りました。

稲垣流「長屋暮らし」に学ぶ、現代の「足るを知る」精神

読んでみたら、予想は的中。FIRE後の生活でよく聞くのが、お金の心配、あとは時間を持て余してまう、そんな声をよく聞きますが、この本はそんな悩みを解決してくれる本になるかもしれないです。稲垣さんの潔い暮らしっぷりがなんとも心地よく感じる本でした。

この本をひとことで言い表すなら、まさに「足るを知る(知足)」ということかなと思います。

私のブログでも、投資マインドや生き方のヒントとしていくつかの「禅語」を紹介してきましたが、稲垣さんが実践されている生き方は、まさに禅の精神そのものでした。

稲垣さんは現在お一人暮らしで、作中で描かれる暮らしぶりは、本人も書いているようにまるで「江戸の長屋」。

冷蔵庫も、洗濯機も、テレビも、掃除機も使わない。電気代は月に数百円という生活を実践されています。

さすがに、子どもがいる我が家のような4人家族の世帯で、それをそのまま真似することは物理的にも精神的にも難しいと感じます。しかし、その根底にある「考え方」には、共感しかありませんでした。

お金やモノに頼る生活は、人間を「退化」させる

世間一般で言われる「豊かな暮らし」といえば、どんなイメージでしょうか。

ブランド物のいい服を着て、最新の便利家電に囲まれ、高級なレストランで贅沢な料理を食べる……そんな「消費の拡大」を思い浮かべる人が多いかもしれません。

しかし、本書は「本当にそれが豊かなのか?」と、私たちにハッとさせてくれます。

お金やモノが溢れる生活は、一見すると快適で楽です。しかし、裏を返せば「お金を払って、システムに自分の生活を委ねている状態」でもあります。

すべてをボタン一つ、お金一つで解決していると、人間は頭も体も使わなくなり、野生の勘や五感が少しずつ「退化」していってしまいます。気がつけば、ただ「ボーッと生きている」状態になりかねないと稲垣さんは警鐘を鳴らしています。

「お金がない、モノがない。ならば、自分が動く。知恵を絞って工夫する」

実は、この「制限の中での工夫」のプロセスこそが、脳を活性化させ、私たちの心に「自分の力で生きている」という、何にも代えがたい心地よい満足感(自己効力感)をもたらしてくれる。それが稲垣さんがお金や物に頼らない生活をして気が付いたことのようです。

「生きる力」を養えば、FIREのハードルは下がり、退屈は消滅する

私はこの本を読んで、確信したことがあります。

モノに頼らず、お金に頼らず、「自分の頭と体で生きる力」を養うことができれば、FIRE(リタイア生活)の質は劇的に変わるということです。

まず、お金を払って利便性を買う生活から抜け出せれば、生活コストが自然と下がります。それは物理的にも精神的にも、「FIREに必要な資産額(ハードル)」を下げることができることを意味します。「最悪、何があっても工夫して生きていける」という自信は、投資の含み益よりも安心感をくれるんじゃないかと。

そして同時に、リタイア後に多くの人が直面する「暇だ、退屈だ」という悩みが消滅します。

日々の料理や掃除、片付け、あるいは不便を乗りこなす工夫そのものを「自分の力で生きる実験(アクティビティ)」にしてしまえば、日常のすべてが主体的なクリエイティブ活動になり、退屈だな、暇だななんて考えることが減ります。体を動かせば当然休みたくなるので、何もしない時間ですら意味のある時間になってきます。

これからの私のステップ:まずは身の回りの「引き算」から

今回の気づきを経て、本書でも書かれていることですがまずは身の回りの「モノを減らす」ことから、見習って実践してみようと思います。

具体的には、油断すると増えてしまう「服、靴、食器」といった、毎日肌に触れ、使うものから手をつけます。

数を絞り、ひとつで何役もこなす万能なものだけに厳選していく。この「引き算」を通じて、空間と脳にさらなる「余白」を作っていく予定です。
普段安売りしていると、安いしとりあえず買っておくかということもこれまではありましたがそういうのもしなくなるなと思いました。

資本主義のゲーム(出世や過剰な消費)から一歩降りたあと、自分だけの静かで最高な日常をどう組み立てるか。

会社員を卒業した今だからこそ、自分の頭と体をフルに使って、本当の意味での「経済的自立と精神的自由」を。そう強く思わせてくれる気づきをくれた本でした。

さて、本を返しに行ってまた稲垣さんの本を借りてこようかな。