最近は投資についての情報も増えてきましたが、私が運用を始めた頃は、インデックス投資も米国株もまだ世間一般には見向きもされていない時代でした。

当時は今のようにYouTubeで分かりやすく解説してくれる人もおらず、頼れるのは本屋に並ぶ数少ない専門書だけ。そこに書かれていた「ローソク足のゴールデンクロスが出たら買い!」という言葉を鵜呑みにして、必死にチャートを追いかけては買いボタンを押していました。

結果は、惨敗です。上手くいかないことの方が圧倒的に多かった。

あっちの手法を試しては失敗し、こっちの理論に飛びついては資金を減らす。正直、何を信じたらいいのか完全に迷子になっていました。気がつけば、そんな風に右往左往したまま10年という貴重な時間を溶かしてしまっていたんです。投資センスがない、素人が手を出してもカモにされるだけなんだ。そう本気で凹んでいました。

実力ではなく、ただ「相場の波」に流されただけだった?

投資スタイルも確立せず、暗闇の中で悩んだまま、相場は「アベノミクス」に突入しました。

結論から言うと、私の資産は増えました。ただ、何か特別なスキルを身につけたわけでも、劇的な裏技を見つけたわけでもありません。ただ買えば上がる、そんなお祭り騒ぎの波に、たまたま乗っかっただけ。そんな表現が適切かもしれません。

それまで負け続けて成功体験なんてゼロに等しかった私ですが、この時ばかりは、資産がみるみる増えていく。

「あれ? もしかして素人の私でも、ちゃんと勝てるじゃないか……?」

心のどこかで素人は株式投資で勝てないんじゃないかと諦めかけていました。10年間で完全に失っていた自信が、この時初めて芽を出したような感覚でした。

仮に実力ではなく相場が良かっただけで資産が増えたとしてもこの経験は大きかったです。

知識をどれだけ詰め込んでも、なぜ狼狽売りしてしまうのか

今振り返ると、私に足りなかったのは「ほんの少しの自信」だったのかもしれません。

自信がない時の投資って、株価がちょっと下がっただけで、「あぁ、また損する」「やっぱり自分の判断は間違っていたんだ」とすぐに弱気になってしまう。そして、恐怖に耐えきれなくなって、一番底のような最悪のタイミングで狼狽売りをしてしまう。かつての私は、完全にこの負のスパイラルにハマっていました。

手法が悪いのではなく、自分を信じる力がなさすぎて、自分のポジションを維持できなかった。負けている間もいろんな投資本を読みましたし、それなりに知識はついていた。だけど、それを信じ切れていなかったのです。問題は知識や投資法ではなく私の心の問題だったのだと思います。

たまたま訪れた相場の恩恵だとしても、「実際に資産を増やせた」という経験は、私の中に強固な軸を作ってくれました。ちょっとやそっとの下落じゃ動じない、ドタバタしない。そんな心の余裕が生まれたのは、この小さな自信のおかげです。

正解を探すのをやめて、自分を信じてみる

よく投資の本には「自分でストーリーを描いて、それを信じて投資しよう」なんて書かれていますよね。昔の私はそれを読んでも「それができたら苦労しないよ」と冷めた目で見ていました。

でも、一度自信を持ててからは、その意味が腑に落ちたんです。

他人の意見や流行りの情報、一時的な株価の乱高下に振り回されるのではなく、「自分が納得して選んだ企業だから、しばらく様子を見よう」「このシナリオが崩れていないなら、ホールドでいい」と、自分の頭で描いた物語を信じられるようになりました。

ただ、銘柄に惚れるなという格言があるように過信しすぎるのはよくありません。自分が描いたシナリオから大きく外れたり、予期せぬバッドニュースが出た時は潔く手仕舞う勇気も必要です。

もし今のあなたが「何をやっても上手くいかない」と悩んでいるなら、それは手法のせいではなく、私のように「自分への信頼感」が少し揺らいでいるだけかもしれません。