「このまま今の組織に居続けても、10年後、20年後の自分の姿が透けて見えてしまう……」

「出世や昇給を追いかけるレースに、どこか心の奥底で虚しさを感じていないか?」

もしあなたが今、会社員として働くことにそんな疑問や閉塞感を抱いているなら、ぜひ手に取ってほしい一冊があります。元朝日新聞記者・稲垣えみ子さんの著書『魂の退社』(2016年刊行)です。

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私の記憶では本書が発売された当時は、まだ「FIRE(経済的自立と早期退職)」という言葉は一般的ではなかったと思います。そのため、作中にそのワードは一度も登場しません。

しかし、ページをめくるたびに溢れ出すのは、まさに「真のFIRE」の思想そのものでした。読んでいて共感しまくりでしたし、あらたな気づきもたくさんもらえました。

私も40代で組織を離れ、今ちょうど自分らしいライフデザインを探している最中です。
会社員として働いている方、FIREを目指している方、FIRE済みの方、そんな方たちにとても参考になる1冊だと思い今回ブログで紹介させていただくことにしました。本書の内容を参考にしながら私が感じたことを書いていきます。

1. 終わりのない「カネと人事」のゲームから降りる

多くの会社員が日々の労働に耐える原動力、それは「カネ」と「人事」ではないでしょうか。

「もっとお金がほしい」「人より偉くなりたい」「同期に負けたくない」——。会社という組織は、この他者評価の欲求を刺激することで、私たちを走らせる強力なシステムを持っています。

しかし、稲垣さんは本書の中で、そのゲームに振り回されることの危うさを鋭く指摘しています。

どれだけ昇進しても、それは組織という狭い枠組みの中での評価に過ぎません。収入が増えれば生活水準も上がり、それを維持するためにさらに会社にしがみつかなければならなくなる。これはまさに、終わりのないラットレースです。

組織の先に見える先輩たちの姿に「虚しさ」を感じたなら、それは感性が正常に働いている証拠だと思います。その違和感を誤魔化さず、一度立ち止まり、「他人が作ったゲーム」から主動的に降りること。それこそが、自分自身の人生を取り戻す第一歩になると感じました。

2. FIREとは、人生の「林住期(りんじゅうき)」である

本書を読んで私が最も深く共感し、今のFIREという生き方に完全に合致したのが、古代インドの思想である「四住期(しじゅうき)」の捉え方です。

古代インドでは、人生を以下の4つの時期に分けて考えていました。

人生のステージ意味合い現代における状態
学生期(がくせいき)学び、心身を育てる期間義務教育から学生時代
家住期(かじゅうき)社会人として働き、家庭を築く義務の期間会社員として馬車馬のように働く時期
林住期(りんじゅうき)社会の義務から離れ、本当の自分と向き合う期間主体的・経済的自立によるFIREの期間
遊行期(ゆぎょうき)すべてを悟り、人生を締めくくる期間晩年・人生の最終章

現代人の多くは、定年を迎えるまで、あるいは人生の最期を迎えるまで「家住期」のテンションのまま走り続けようとします。収入も、人間関係も、自分のアイデンティティさえもすべて会社に依存したまま定年を迎えるからこそ、退職した瞬間に燃え尽き、喪失感に苛まれてしまうのです。
稲垣さんも著書の中でこれはあまりに乱暴なギアチェンジだと表現しています。

私がFIREを目指し、実現して今感じているのはまさにこの点でした。それは、「FIREとは、単なる早期リタイアではなく、主体的に人生の『林住期』へ足を踏み入れることだ」ということです。

一度社会や会社を完全に離れ、何の肩書きもない「ただの自分」に戻る。そして、圧倒的な余白の中で自分自身と深く向き合う。この林住期の時間こそが、現代人にとって最も贅沢で、最も必要なプロセスなのかもしれないと感じています。

3. 「引き算」によって現れる、本当の自由と仕事

大企業や安定した組織を辞めようとすると、周囲からは決まってこう言われます。

「もったいない」と。稲垣さんも朝日新聞社の記者ということで散々言われたようですが、私も公務員という身分を捨てる時に多くの人に言われました。「安定しているのに」「これからもっと給与があがるのに」と。

しかし、本書の言葉はそんな常識を心地よく粉砕してくれます。

「何かを手に入れることが自由ではなくて、なくてもやっていけることを知ることが自由」

「何かをなくすとそこには何もなくなるんじゃなくて何かが現れる」

(『魂の退社』より)

私たちは、多くのお金を稼いで自由を「買おう」としがちです。しかし本当に必要なのは、物質的な足し算ではなく、生活をシンプルにし、「多くを持たなくても、自分は工夫して豊かに生きていける」という執着からの解放です。

「会社に居続けることの方が、自分の貴重な人生の時間を搾取されてもったいない」

そんな気づきを本書は与えてくれます。そう思えると、会社への依存から脱却しやすくなるのではないでしょうか。

そして、会社という檻を出て初めて、本当の「仕事」がどういうものか分かるようになるとも稲垣さんは言っています。仕事とは、会社に雇用されることでも、毎月決まった給料をもらうことでもありません。「カネや人事のためではなく、純粋に人を喜ばせ、助けるために自分の命(時間)を使うこと」。これこそが、林住期に味わえる極上の心地よさです。

まとめ:人生の主導権を、自分に取り戻そう

稲垣えみ子さんの『魂の退社』は、単なる一人の女性の退職ドキュメンタリーではありません。

会社という巨大なシステムに心を奪われそうになっている現代人に贈られた、「自分の人生の主役に戻るための哲学書」です。

  • すでにFIREを達成して「答え合わせ」をしたい人
  • これからFIREを目指して自分軸を固めたい人
  • 今の働き方に名前のない虚しさを抱えている会社員の人

あらゆる人の人生に、静かで力強いヒントをくれる名著です。

自分だけの林住期を迎えるために、ぜひ一度、手に取ってみてください。心からおすすめします。稲垣さんの著書は他にもあるようなので、この後別の著書も読んでみようと思っています。

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