最近、SNSなどで「NISA貧乏」という言葉をよく耳にします。これは主に資産形成期の方が、非課税枠を埋めるために無理な入金を続け、手元の現金がなくなって日々の生活がカツカツになってしまう状況を指すようです。

「未来の資産を最大化したい」という想いは素晴らしいですが、実はFIRE(早期リタイア)を達成した後も、私たちは別の形の「貧乏(心理的な窮屈さ)」に陥るリスクを抱えています。いわば「FIRE貧乏」とでも言える状況です。3,000万円でFIRE可能だ!という人もいれば、それだけじゃ無理だという人もいる。そこは、それぞれ環境や価値観が異なるので正解はないと思っていますが、ただ、FIREという状態にあこがれて無理してFIREすることはおすすめしません。資産形成期も生活カツカツ、FIRE後もカツカツ。そんな人生でも構わないという人はそれでいいですが、ほとんどの人はそうではないはずです。

今回は、私が実践している管理の考え方をもとに、資産を枯渇させず、かつ「恐怖」を感じずに自由を謳歌するための思考法をまとめました。


1. 管理の目的がガラリと変わる:最大化からハンドル操作へ

資産形成期とFIRE後では、管理の「目的」が根本から変わります。

  • FIRE前:資産を「最大化」するための管理

「1円でも多く種銭を作る」のが正解。支出を削り、投資に回す。もしFIREを目指すなら「NISA貧乏」を恐れずアクセル全開で加速するフェーズです。

  • FIRE後:資産を「枯渇させない」ための管理

人生を完走するために、「資産が底をつかないか」を確認しながらハンドルを微調整するフェーズです。

形成期に「最大化」に固執しすぎた癖が抜けないと、FIRE後も資産が減ることに怯え、せっかく手にした自由を楽しめなくなってしまいます。FIRE後は、「いくら持っているか」より「計画通りに使えているか」に注目するのが正解なんです。

2. 「減る恐怖」を「安心」に変える。差異を追う管理術

私は年齢別に「資産残高」「配当金」「生活費」を並べたシミュレーション表を作っています。配当金で足りない分を資産から取り崩していく、シンプルなものです。(以前記事にしましたので参考にしてください。)

この管理の真の目的は、単なるシミュレーションではありません。「事前に立てた予測(理想)と、現実にどれくらいのズレがあるか」をチェックすることにあります。

なぜ「ズレ」を管理するのか?

FIRE後、多くの人を苦しめるのは「資産が減っていくことへの本能的な恐怖」です。でも、手元に「計画」があれば、見方が変わります。

  • 計画より残高が多い: 「もっと人生を楽しんでも大丈夫」という自分への許可になる。
  • 計画より残高が少ない: 「来年は少し調整しよう」と、感情を抜きにして冷静な対策が打てる。

「減るのが怖い」という感情を、「計画の範囲内か?」という論理的な安心感に変えてくれる。それが、出口戦略における管理の役割です。

3. 「最悪の事態」でも揺るがない、超保守的な前提条件

FIRE後の安心感を手に入れるためには、シミュレーションの「条件」をいかに厳しく設定しておくかが鍵となります。私は、以下のような前提を置いています。

  • 資産の成長は「0%」で見積もる

4%ルールというように一般的に資産は時間とともに成長していくと想定されていますが、私は株価が全く上がらず、元本が横ばいのままでも、一生資産が尽きないような設定にしています。それには理由があって、私のポートフォリオの中には約25%ぐらいはカバードコールETFや毎月分配投信など資産成長が期待できない商品も含まれていることから、資産成長は低めに見積もるようにしています。

  • 配当は「現実の数字」をベースにする

配当管理アプリに表示される現在の利回り(約5%)を基準に、手元に入るキャッシュを計算しています。

  • 税金は「30%」という重めの設定で

現在は約20%ですが、将来の増税リスクを考慮して、あえて「30%」引かれる想定にしています。

  • 生活費と教育費をたっぷり積み込む

65歳までは月70万円、それ以降も月50万円と、ゆとりを持った生活費を設定。さらに、子供二人の教育費として合計4,000万円を見積もっています。

ここまで厳しく見積もって、それでも「大丈夫だ」という結果が出たことで、ようやくFIREの決心がつきました。FIRE後は定期的にこのシミュレーション通りに資産が推移していくかどうかを管理していくことになります。


結論:管理は「幸せ」のために行うもの

資産形成期の管理は、未来を買うための「修行」でした。

でも、FIRE後の管理は、「今、この自由を楽しんでも大丈夫なんだ」という確信を得るための作業です。

グラフが少しずつ右肩下がりになっても、それがあなたの想定内であれば、それは「正しく人生を使い切っている」という成功の証です。

数字を怖がるのではなく、数字を味方につけて、安心したFIREライフを送っていきたいと考えています。

FIRE後の資産管理は前回の記事も参考になると思いますので是非。